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肺がん

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治療

気管支鏡下あるいはCTガイド下生検により肺がんの組織型診断を行います。また病期分類に関しては、頸部から骨盤までの造影CT、脳の造影MRI、FDG-PET等により決定し、これら組織型と病期分類を基に治療方針を決定します。以下に示すのは代表的な治療方法であり、患者さまの背景や全身状態、併存疾患などにより異なることもありますので、詳細は各担当医にご相談ください。

① 非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん等)

IA-B期→基本的には外科的切除を行います。併存疾患や低肺機能などの理由で外科的切除が困難な場合には定位放射線照射(Stereotactic Radiation Therapy; SRT)や凍結治療などを行うこともあります。外科的切除後のIB期には術後補助化学療法(UFT内服)を行います。

IIA-B期→基本的に外科的切除を行い、術後補助化学療法(プラチナ併用化学療法)を行います。場合によっては術前化学療法(プラチナ併用化学療法)後に外科的切除を行う場合もあります。IIB期のうち胸壁浸潤がん(T3)に関しては術前化学放射線併用療法(胸部放射線照射量;40-46Gy/20-23回)後に外科的切除を行います。

完全切除可能なIIIA(N2)期、胸壁浸潤がんを含む隣接臓器浸潤がん(T3-T4)→術前化学放射線併用療法(胸部放射線照射量;40-46Gy/20-23回)後に外科的切除を行います。また完全切除不能なIIIB、IIIC(N3)期には基本的に根治的化学放射線併用療法(胸部放射線照射量;60Gy/30回)を行いPD-L1阻害薬のデュルバルマブを投与します。完全切除が可能と判断されるIIIB、IIIC(N3)期には術前化学放射線併用療法後に外科的切除を行う場合があります。

ⅣA-B期→全身化学療法を行います。正確な組織型診断及び得られた遺伝子学的情報をもとに最適な個別化治療を行います(以下の「各治療の説明B 化学療法」をご参照ください)。

各治療の説明
A 外科手術

5cm以下の肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術

肺は右肺が上葉、中葉、下葉に、左肺は上葉、下葉の5つの房状(肺葉)に分かれており、病巣のある肺葉を切除する方法です。

当院では患者さまへの体の負担が軽減できるよう、小さな切開で開胸手術を行うことができる胸腔鏡を利用した胸腔鏡補助下手術(VATS:Video Assisted Thoracoscopic Surgery)を導入しております。

[肺葉切除術]

早期肺癌に対する肺区域切除

5cm以下の肺癌でリンパ節転移がない場合には標準手術として胸腔鏡下で肺葉切除を行っています。完全胸腔鏡下に行う肺癌手術は小さな創で行う事ができ痛みが少なく、手術からの早期回復が期待されます。

早期肺癌に対する肺区域切除

早期肺癌に対する肺区域切除

肺癌に対しては通常、肺葉切除という手術が行われますが、早期・小型肺癌に対して当科では肺を小さく切除する区域切除に積極的に取り組んでいます。全スタッフが最近4年間に経験した区域切除は300例を越えています。

早期肺癌に対する肺区域切除

肺葉切除が術後肺機能を約85%に低下させるのに比べて、区域切除は90〜95%ほどにしか低下しません。そのため区域切除の術後は肺葉切除に比べて体力の低下が少なくなります。術後生存率は、選択された症例において、区域切除は肺葉切除と同等の治療成績であることが発表されています。肺癌の性質やあなたの体力により肺葉切除がいいか区域切除がいいか判断されます。主治医とよく相談の上、決定します。

局所進行肺癌に対する術前放射線化学療法後の手術療法

 

肺の周囲に浸潤している肺癌やリンパ節転移のある肺癌に対しては手術前に放射線療法と抗がん剤治療を行って、腫瘍を小さくして、腫瘍の勢いを弱めてから手術をした方が、術後の再発が少ないことが報告されています。放射線化学療法で腫瘍や転移が縮小した症例においては、約40%近い患者さんが長期生存されています。

早期肺癌に対する肺区域切除

小さな肺腫瘍に対する造影剤によるマーキング後の切除術

小さな肺腫瘍は手術中に目で見ても触っても判らないことが多くあります。それに対して術前に色素と造影剤によるマークを行うことにより確実な切除を心がけています。

小さな肺腫瘍に対する造影剤によるマーキング後の切除術

図は微小肺癌ですが、それに対して造影剤をCT室で病変に注入し、それをマークに切除した症例です。

気管支の中枢にできた肺癌に対する気管・気管支形成術

気管や太い気管支に浸潤している癌は通常ですと手術不能、あるいは片肺全摘を必要とすることがありますが、私どもは気管・気管支の癌の浸潤部位のみを切除して肺を温存することを積極的に行っています。この手技は熟練を要しますが、私どもはその経験数が豊富です。

局所進行肺癌に対する拡大合併切除術

肺癌が隣の臓器に浸潤していても、切除可能であれば、拡大合併切除を積極的に行っています。心臓の一部、大動脈の一部さえも積極的に合併切除していておりますが、現在までに手術死亡はありません。

気管や気管支の狭窄に対する拡張治療

癌あるいは良性の瘢痕により気管あるいは気管支が狭窄をして息が辛くなる場合があります。それに対して私どもはステントの挿入やレーザー治療を多く手かげております。

慢性膿胸に対する開窓術後の筋弁・筋皮弁・大網弁を用いた治療

昔に罹った膿胸(結核のことが多い)が何年も経過した後に再発した有瘻性(気管支と膿胸腔が交通すること)の場合には、内科治療ではまず治りません。当院では開窓術(胸壁を切除して、膿胸腔を開放すること)を行い、後に胸壁の筋肉、あるいはさらに皮膚をも用いて膿胸腔を充填することを行っています。特に筋弁もしくは筋皮弁を用いた膿胸根治法における当院の経験は豊富です。

転移性肺癌に対する外科治療

多くの種類の癌が肺に転移をします。しかしある種の癌で、転移の個数が多くなく、原発巣が完全切除されている場合には、肺の転移巣を切除することにより治癒する、あるいは余命が延長することが知られています。
そのため「転移をしたからもうだめだ」とあきらめないで、肺転移巣が切除可能かどうか受診することが勧められます。

術後合併症について

術後には望まない不都合な状況が発生することがあります。これを合併症といいます。特に高齢者、喫煙者、低肺機能症状を持つ患者さまは肺がんの術後合併症のリスクが高く、より一層の注意が必要とされています。
主な術後合併症として、胸に空気や水がたまりやすいことから、肺水腫、乳糜胸、膿胸、気管支瘻、肺炎などになるケースがあります。
また、これ以外にも、操作と直接関係なく発生する脳疾患や心疾患、麻酔薬や手術前後に投与された薬剤による肝機能障害などが起こることもあります。
これらの合併症については、発症を防げるようにスタッフ一同、術前および術後、細心の注意を払い診療及びケアに携わっておりますが、医療過誤や過失によるものではなく、一定の割合で発生してしまいます。心配な方は、担当の医師にお尋ねください。

術前・術後のリハビリテーションについて

当院では、手術(主に肺葉切除術)後も患者さまが日常生活において負担がかからないよう、呼吸器リハビリテーション担当の理学療法士による術前および術後の呼吸リハビリテーション(以下、リハビリ)を積極的に実施しております。

リハビリテーションの流れ

肺がんの手術(肺葉切除術)は手術1~3日前に入院していただくケースが一般的です。術前の1~3日間にリハビリの説明と術後のリハビリに向けた練習、現状の身体機能評価を行ないます。
そして、術後身体状況に問題がなければすぐに病室でリハビリを開始します。
ほとんどの患者さまが退院までに日常生活に支障がない程度の活動レベルに回復します。
入院から退院までの期間は約1~2週間程度です。

リハビリテーションの流れ

1術前のリハビリテーション

リハビリテーションの流れ

①横隔膜呼吸の練習
鼻から膨らませる様に空気を吸い、ゆっくり、深呼吸を行います。


リハビリテーションの流れ

②呼吸練習器具を用いて手術前より呼吸練習を行います。
手術後の肺合併症予防に有効です。


リハビリテーションの流れ

③術後、咳嗽力が低下し、自分で痰を出すことが困難になります。術前より咳嗽方法を習得することが大切です。


術後のリハビリテーション

リハビリテーションの流れ

①術後1~2日目より、理学療法士の指導・補助の下、歩行練習を始めます


リハビリテーションの流れ

②歩行訓練は病室、病棟廊下などを利用して血中酸素飽和度をチェックしながら行ないます。
また、痛みに関しては表面の傷の痛みはなくなっても肋間神経の痛みはしばらく残り、肩こりやしびれなども出現する場合がありますので、痛みを強く感じていらっしゃる患者さまへは鎮痛剤や安定剤の処方を行ないます。


リハビリテーションの流れ

③術後早期から自分自身で練習を行い、肺の拡張を促します。


B 化学療法

殺細胞性薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあります。非小細胞肺がんであれば、基本的に抗PD-L1抗体(22C3抗体)による免疫組織化学染色を行い腫瘍のPD-L1発現割合を調べた後に、免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ・ペンブロリズマブ・アテゾリズマブ・デュルバルマブ)の投与を検討します。薬剤によってはPD-L1発現割合の計測は必須でありません。非扁平上皮・非小細胞肺がんであれば、ドライバーがん遺伝子(EGFR遺伝子変異、ALK・ROS1融合遺伝子異常、BRAF遺伝子変異)を可能な限り検索します。これらの情報によって個々の患者さまに個別化された適切な治療薬剤を提供します。遺伝子検査は有料で検査する内容により料金は異なってきます。詳細は各担当医にお尋ねください。

① 殺細胞性薬
一般的に抗がん剤と言われる薬剤です。注射薬と内服薬がありますが、多くは注射薬です。基本的に日常生活が自立し活動力のある方に適応となります。寝たきりの方など活動力が著しく低下している方に投与すると有害事象が強く出現し、逆に生命予後を短くしてしまう可能性が高くなるためお勧めしておりません。殺細胞性薬の有害事象としては血液毒性と非血液毒性に大別されます。血液毒性とは骨髄抑制による白血球、ヘモグロビン、血小板の減少です。悪化すると重篤な感染症、貧血や出血などを認めることがあります。他の特徴的な有害事象は欄に記載しましたが、その他にも様々な有害事象が発生する可能性があります。各薬剤により投与間隔や期間が異なるため詳細は各担当医にお尋ねください。

75歳未満
プラチナ製剤(主にシスプラチン) + 第3世代抗がん剤(±アバスチン)を併用投与します。投与方法は各殺細胞性薬により異なります。もちろん分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬に関しては適応があれば積極的な投与を行います。

75歳以上80歳未満
プラチナ製剤 + 第3世代抗がん剤を使用しますが、プラチナ製剤の場合にはカルボプラチンの使用が多くなります。患者さまの状態によっては第3世代抗がん剤のみを投与する場合もあります。その場合の有効性はプラチナ製剤併用時よりも劣ることになります。もちろん分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬に関しては適応があれば積極的に投与を行います。

80歳以上
殺細胞性薬に関しては、有効性・安全性を示す医学的根拠に乏しいため通常は行いませんが、高齢の方でも見た目年齢の若い方もいらっしゃるため、暦年齢のみで治療適応を決めるようなことはしていません。もちろん分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬に関しては適応があれば積極的な投与を考慮します。

 

商品名

一般名

特徴

注射

シスプラチン

シスプラチン

プラチナ製剤です。当院ではジェネリック医薬品を使用しています。 有害事象は腎毒性や嘔気、嘔吐等があります。腎毒性を予防するために3日間点滴をします。

カルボプラチン

カルボプラチン

プラチナ製剤です。当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象は腎毒性や嘔気、嘔吐等があり、腎毒性はシスプラチンより少ないです。

アクプラ

ネダプラチン

プラチナ製剤です。 有害事象は腎毒性や嘔気、嘔吐等があります。ドセタキセルと併用し扁平上皮がんに使用します。

アリムタ

ペメトレキセド

非扁平上皮・非小細胞肺がんに使用します。 有害事象はしびれや嘔気等があります。有害事象軽減のため葉酸とVB12の補充を行います。

ドセタキセル

ドセタキセル

当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象としては骨髄抑制、消化器症状等があります。

パクリタキセル

パクリタキセル

当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象としては投与時のアレルギー反応(発熱、呼吸困難、血圧低下)やしびれ等があります。

アブラキサン

Nab-パクリタキセル

パクリタキセルの製剤を加工し副作用を少なくした製剤です。

ゲムシタビン

ゲムシタビン

当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象としては薬剤性肺障害や血小板低下等があります。

ビノレルビン

ビノレルビン

当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象としては静脈炎等があります。

アバスチン

ベバシズマブ

一般的には第3世代抗がん剤と併用して使用されます。有害事象としては高血圧、蛋白尿、出血等があります。

サイラムザ

ラムシルマブ

ドセタキセルと併用します。有害事象は蛋白尿、出血等があります。

内服

 

TS-1

テガフール/ギメラシル/オテラシル

内服薬です。有害事象は嘔気や下痢などの消化器症状です。

UFT

テガフール・ウラシル

内服薬です。術後に服用することが多いです。

② 分子標的薬
肺がんの発症に大きく関わる原因遺伝子にEGFR遺伝子変異、ALK、ROS-1融合遺伝子異常、BRAF遺伝子変異があります。これらがん化に強く関わる原因遺伝子を標的として治療する薬剤です。生検・手術で採取した組織検体、血液検体などを用いてこれらの原因遺伝子を調べます。結果が判明するのに約2-3週間程度かかります。治療薬は主に内服薬であり、また殺細胞性薬と比較し奏効ある確率は非常に高く、また概ね有害事象も少ないため通院治療が可能です。

 

商品名

一般名

特徴

内服

 

 

イレッサ

ゲフィチニブ

EGFR遺伝子変異陽性の方が対象です。有害事象は肝障害、皮疹、下痢、薬剤性肺障害等があります。

タルセバ

エルロチニブ

EGFR遺伝子変異陽性の方が対象です。有害事象は肝障害、皮疹、下痢、薬剤性肺障害等があります。

ジオトリフ

アファチニブ

EGFR遺伝子変異陽性の方が対象です。有害事象はイレッサと類似していますが、下痢が他の薬剤よりも強く認められることがあります。

タグリッソ

オシメルチニブ

EGFR遺伝子変異陽性の方が対象で一番初めに使用する薬剤です。有害事象に皮疹、下痢、心電図異常があります。

アレセンサ

アレクチニブ

ALK融合遺伝子異常を有する方が対象です。 有害事象は味覚障害、発疹、便秘、消化管穿孔、薬剤性肺障害等があります。

ザーコリ

クリゾチニブ

ALKまたはROS-1融合遺伝子異常を有する方が対象です。 有害事象は視覚障害、下痢、浮腫、薬剤性肺障害等があります。

ジカディア

セリチニブ

ALK融合遺伝子異常を認め、クリゾチニブを内服し治療効果が認められなくなった方が対象です。 有害事象は悪心や嘔吐、下痢などの消化器症状や肝障害、薬剤性肺障害等があります。

タフィンラー/メキニスト

ダブラフェニブ/トラメチニブ

BRAF遺伝子異常を有する方が対象です。有害事象は発熱、消化器症状、皮疹、二次発癌、心障害等があります。

③ 免疫チェックポイント阻害薬
体の中にリンパ球という細胞が存在しますが、体内に異物が侵入した際にリンパ球が異物を認識し除去します。がん細胞は異物として認識されないよう工夫し体内で増殖します。再度、リンパ球にがん細胞を異物として認識させるようにする薬剤が免疫チェックポイント阻害薬です。使用に際しては採取されたがん組織検体にPD-L1発現の有無を確認します。PD-L1発現のない方は組織型によっては使用できない場合があります(詳細は各担当医にお尋ねください)。現在使用できる薬剤は全て注射剤であり、副作用の特徴は殺細胞性薬とは全く異なり、体の免疫機能を調整する薬剤であることから、様々な自己免疫に起因する有害事象が認められます。

 

商品名

一般名

特徴

注射

オプジーボ

ニボルマブ

有害事象として糖尿病や重症筋無力症、甲状腺機能異常、薬剤性肺障害、薬剤性腸炎等があります。

キイトルーダ

ペムブロリズマブ

有害事象はニボルマブと同様です。

テセントリク

アテゾリズマブ

有害事象はニボルマブと類似しています。また髄膜炎の有害事象があります。

C 放射線治療

肺がんにおいて放射線照射は有効な治療法で様々な使用法があり、目的に応じて根治的照射(完全治癒を目的)と緩和的照射(症状緩和を目的)があります。放射線は目的によって照射量が異なり、それによって照射日数も異なります。またがん周囲の臓器にも放射線がある程度照射されることにより障害が生じます。皮膚障害(皮膚が赤くなる)や食道炎(嚥下時に痛みを伴う)は照射中に認められます。また胸部照射中または照射6ヶ月後までに放射線性肺障害(発熱や咳、呼吸困難)が出現します。他にも心臓や脳にも障害が認められる時があります。

定位放射線照射
・定位放射線治療(Stereotactic Radiation Therapy; SRT); 数回に分割して照射を行う
・定位手術的照射(Stereotactic Radiosurgery; SRS); 1回で照射が完了する

早期の非小細胞肺がんに対し、何らかの医学的な理由で外科的切除が行えない場合の代替治療法として、呼吸同期体幹部SRTを行っています。また肺がんの脳転移に対して当院はSRTを行っていますが、γナイフ治療(コバルトから出るγ線を用いたもの)に代表されるSRSは当院で行えないため、千葉県循環器病センターや築地神経科クリニックのγナイフセンターに紹介させていただいています。

全脳照射
肺がんの脳転移に対しては可能な限りSRTやSRSを行いますが、転移の大きさや個数の多い場合には行えない場合があります。その際には脳全体に放射線照射を行う全脳照射(30Gy/10回)を行うことになります。急性期には嘔気や嘔吐、脱毛などの症状が認められ、照射後長期間経過した後の晩期毒性として物忘れなどの認知機能や下垂体機能の低下などが認められることもあります。

他にも、重粒子線治療(炭素線治療)や陽子線治療などもありますが、本邦では保険認可されておらず、当院では行っておりません。医学的適応があると判断した場合には実施可能な施設にご紹介させていただきます。

D 凍結治療

2cm以下の肺癌や転移性肺癌に対する局所麻酔下の液体窒素を用いた凍結治療

最近はCTにより超早期肺癌と言われる小さな肺癌や、他臓器の癌からの小さな肺転移が見つかるようになりました。その場合どの施設でも手術を優先されますが、亀田総合病院では凍結治療も行っています。同方法はCTを見ながら凍結針を腫瘍に刺して、針の温度をマイナス170度以下にして癌を死滅させる治療です。
亀田総合病院で行われる凍結治療は液体窒素を用いる方法です。従来の凍結治療はアルゴンガスを用いた方法です。一方、液体窒素を用いる凍結機器は近年開発されたものであり、アルゴンガスより強力な凍結能力を有し、2010年に米国のFDA(日本の厚生労働省に相当)で承認され、2011年より市場販売され始めました。当院では2013年11月から液体窒素を用いた凍結治療を原発性肺癌および転移性肺癌に対して行っており、2014年12月まで35人の患者さんに凍結治療を行ってきました。液体窒素を用いた凍結は凍結能力が高いので、通常は1本の凍結針で治療できます。
同治療は局所麻酔で約1時間かけて行う治療ですが、傷は針の孔だけなので術後の痛みはほとんど無く、通常治療後3-4日目には退院でき、退院後翌日からは通常の社会生活に復帰できます。そのため手術が困難であるといわれる高齢者あるいは体力に余裕のない患者さま、また手術を希望されない患者さまにはこの凍結治療を行っています。

凍結治療が適応となり得る腫瘍を以下に列挙します。
1. 腫瘍のサイズが原則として2cm以下の原発性肺癌あるいは転移性肺癌。
2. 病変の数が原則として1個あるいは2個。
3. 但し、病変が2個以上の多数の転移性肺癌でもその内の1-2個が大きく、大きな転移巣により余命が短くなる可能性がある場合には凍結治療の適応となり得ます。
4. 放射線治療後の肺病変の再発。
5. 呼吸機能の制限や癌の特性により手術療法が困難な場合。

*凍結治療は手術を行う事なく肺の悪性病巣を治療できる有用な方法です。手術ができない方やこれを回避したい方においては特にメリットの多い方法です。その反面、その効果・副作用に関するデータの蓄積が不十分です。それ故、保険適応ではなく自費診療となります。適応に関しては主治医と相談の上判断いたします。

CT室で行う、局所麻酔下の凍結治療

腫瘍に凍結治療用の針を刺して、針に液体窒素を循環させて針の温度をマイナス170℃以下にして、腫瘍を凍結させて死滅させる。

凍結治療の現在までの成績(選択された方のデータであり、すべての肺癌患者に当てはまるものではありません)

現在まで治療した105人の患者さまの生存曲線を示しますが、現在まで90%以上の方が生存されています。

生存率(全例:105例)

以下に局所制御率(*)を腫瘍のサイズ毎に紹介します。1cm以下では局所制御率は100%で再発はありません。1.1 - 2cmでは局所制御率は85%、2.1 - 3cmでは40%です。

*凍結治療を行った部位における再発の制御率

腫瘍制御率(1cm以下:36病例)

腫瘍制御率(1.1~2cm:41病例)

腫瘍制御率(2.1~3cm:31病例)

凍結治療にかかる費用

保険適応ではないので、自費診療となります。
費用=入院治療費:55万円(平均5日間入院)+凍結針1本:15万円=70万円
液体窒素を用いると凍結針1本の凍結範囲が広いので、通常の使用する凍結針の本数は1本です。
そのため通常かかる費用は70万円(消費税抜き)です。
その他に部屋代がかかり、大部屋の場合は1泊につき¥6,480(税込)、個室の場合には1泊につき¥14,040(税込)~です。なお個室の場合には家族の方も泊まれます。

治療をご希望される方、あるいは治療のご質問をされたい方は、亀田クリニック(千葉県鴨川市)の木曜日午前の外来(医師、杉村裕志)あるいは亀田京橋クリニック(東京都中央区京橋)の第1、第3土曜日午前の外来(医師、杉村裕志)を受診してください。

② 小細胞肺がん

LD(限局型)
臨床病期IAのみ手術適応があり、基本的に肺葉切除を行いますが、術後補助化学療法としてシスプラチン併用化学療法が必要になります。それ以上の病期のLDの方には根治的化学放射線併用療法を行います。しかし、これらの併用療法は有害事象が強く認められるため、患者さまの状態に応じて化学療法単独になる方もいます。根治的化学放射線併用療法により、寛解状態に入った方には予防的全脳照射を行います。

ED(進展型)
基本的に化学療法を行うことになりますが、状況によっては姑息的放射線照射を併用することもあります。

A 化学療法

小細胞肺がんに使用する化学療法は殺細胞性薬のみです。基本的な副作用や薬剤投与該当患者は非小細胞肺がんに類似しています。

 

商品名

一般名

特徴

注射

シスプラチン

シスプラチン

プラチナ製剤です。当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象は腎毒性、嘔気や嘔吐等があります。腎毒性を予防するために3日間点滴をします。

カルボプラチン

カルボプラチン

プラチナ製剤です。当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象は腎毒性、嘔気や嘔吐等があります。腎毒性はシスプラチンより少ないです。

エトポシド

エトポシド

当院ではジェネリック医薬品を使用しています。有害事象として嘔気や嘔吐等があります。

カルセド

アムルビシン

有害事象として嘔気や脱毛、不整脈等があります。

イリノテカン

CPT-11

有害事象として下痢などの消化器毒性や薬剤性肺障害があります。

B 放射線治療

小細胞肺がんのLDには、プラチナ製剤(主にシスプラチン) + エトポシド併用化学療法と根治的な胸部放射線照射を同時に使用する根治的化学放射線併用療法を行います。腫瘍性の中枢気道狭窄や上大静脈症候群などによる呼吸困難及び骨転移による疼痛に対しては緩和的な放射線照射を行います。非小細胞肺がんのC 放射線治療もご参照ください。


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